最近はなんとな〜く、ミステリー小説や鈍器本と呼ばれるような、一冊でボリュームのある内容の本を読みたくない時期に突入している。
いや、ミステリー小説も鈍器本も好きなの。でも今がたまたま読みたい気分じゃないだけ。気分が来たら読みたいと思い、着々と積読になっているところ。
今の気分は、200pぐらいのエッセイみたいに軽く読めて、心が穏やかになれるようなものが読みたい。
そこで表紙がかわいくて、日常を切り取ったような話の本を手に取ってみた。
占い師の役割
ショッピングセンターの一角に店を構える占い師のルイーズ吉田。そこにいろんな事情を抱えた悩める人を相手に、20分三千円で占う。
ルイーズが、師匠に言われた言葉がこれ。
三千円の価値をどうつけるかはあなたしだいよ。大事なのは正しく占うことじゃなくて、相手の背中を押すことだから。
出典:強運の持ち主 ニベアより
占い師の仕事って本当にこれだなぁ、と私は思っていた。
知らない人お金を払ってに悩みを相談し、判断に迷っているところを背中を押して後押ししてもらうことで、決断に勇気が出てくる。
誰かに相談したい、誰かに頼りたい、誰かに後押しをして欲しい。そう言う人を相手にしているから、カウンセリングみたいな感じ。
この本の主人公は占い師なのに、占いをしているフリをして仕事をしているところがちょっとおもしろい。
ちゃんと占っても外れることがあるし、占いを適当にしても当たることがある。まさに当たるも八卦当たらぬも八卦。
それだったら正しい占いの結果をそのまま伝えるのではなく、お客さんをよく観察して、お客さんが言って欲しそうな言葉を言うことで背中を押してあげる。
お客さんからしたら、その方がいいのかも。
占い師だって迷うもの
ルイーズは彼氏の通彦と同棲していて、通彦と付き合うきっかけも占いによるものだった。(通彦って初見で読めました?「みちひこ」って読むんですって。私は読めませんでした😅)
通彦はこの上ない強運を持っていて、当時通彦が付き合っていた彼女と二人でルイーズの元に訪れた時に、ルイーズはその強運を見抜いてしまう。
そこで占いで悪いことを言って二人を別れさせて、何かと通彦と運命を感じるように、相性の良さをアピールしたり、待ち伏せしつつ偶然を装って鉢合わせするようにして、どうにか付き合うようになったのだ。
結構強引で大胆なところがあるルイーズ。だからこそお客さんに対しても割り切ったことを言えるのだ。
ところが通彦の運気が下がる時期が来たらしく、ルイーズはどうにかして運気を上げようと試行錯誤をしてく。ラッキーアイテムの金魚を買ったり、派手なシャツを着せられたりする通彦は困惑気味。
ルイーズは本気でどうにかしようと悩んでいるのに、通彦にはあまり伝わらない。
占い自体に関心がないと、確かにそういう反応になるよなぁ。そもそも本人が運気の悪さを実感していないから、アドバイスされても頭に入ってこないもん。わかるわかる。
このカップルの間でのチグハグ感がこの本ではよく出てきて、結構リアル。本当にそんなカップルがいそう。
占い師でもわからないものはわからない
占い師は自分のことは占えない、というのはよく聞くがこの本でもそんな感じだった。
ルイーズが悩んだ時は、占いの師匠に相談をよくしている。
多分この本での占い師の役割が「相手の背中を押すこと」なので、その相手がいないからだと思う。自分が相手というのは成り立たないのだ。
もっとわかりやすく言うと、自分のことは客観視できない。だから占えないのだ。
私の占い師の思い出
実家の近所の商店街では、店が閉まって静かになる時間に、占い師が現れることがあった。
よく現れる場所はパチンコ屋の前で、小さい椅子と机を置いて、【占】と書かれた和紙にろうそくで灯りを灯していた。占い師は本を読むか棒をジャラジャラしてお客さんを待つ。これだけで雰囲気があった。
学生の頃はよく帰りが遅くなっていたので頻繁に見かけていたが、「占ってください」と言う勇気まではなかったなぁ。
もしまた地元に帰ってまだやっていたら、ぜひ占ってもらおう。背中を押して欲しいな。
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