1通のメールが届いた。送り元は日本赤十字社から。
件名を見てみると【献血可能日のお知らせ】とある。
確か女性が400ml全血献血をした場合は、16週間の間隔を空けなければ、次の献血ができなかったはず。
そうか、ということは前回の献血から約4カ月経ったことになるのか。
人生で初めての400ml全血献血の思い出をたどってみることに。
きっかけはなんとなく
過去に3回程200ml全血献血をしたことがあった。
これは学生時代に学校内で行われた集団献血で、授業を抜け出して行われるものだった。
授業を大っぴらにサボれるなんて献血ってすごい!行こう!!
友達と授業を抜けてさb……、献血に行ったのだ。
この時に献血カードを作った。
しかし学校を卒業してからは、献血とはプツッと縁が切れてしまった。厳密に言うと私が積極的に献血に行かなかっただけ。
とはいえ学生時代に作って献血カードは捨てることなく、今もまだ財布に入っている。最近ふとこのカードを見て1つの思いが生まれた。
400ml全血献血してみたい。
200mlの時は特に体調に問題は出なかった。ではその倍の400mlはどうなるのだろうか。
献血ルームで血を抜くんだから、もし体調不良になったとしてもすぐ助けてくれるだろうし、血を抜くことで自分の体がどうなるのか知りたい!
そう思い立ち、早速献血センターの場所を調べてみた。
献血に行くまでに
1つの献血ルームを見つけた。
スカイツリーの近くにある献血ルームで、写真で見た感じきれいな雰囲気が漂う。
せっかく血を抜くという身を削る行為なんだから、きれいな場所で抜いてもらいたい。
しかも休みの日に行くから、せっかくだし献血のついでにおでかけというのもいいかもしれない。
休みの日に行くつもりだったので、夫も誘ってみる。
夫は今まで献血をしたことがないらしく、少しビビりながらも、せっかく血を抜くならきれいなところで抜いてもらいたい、とのこと。
よしよし、そうでしょうとも。私が事前に調べましたよ。
スカイツリーの近くにきれいな献血ルームがあること、おでかけも兼ねて行こう、ということを伝える。
夫、2つ返事で快諾。
よし、二人分の血を確保することに貢献する私えらい。
献血当日の流れ
昼ご飯を食べてから献血に行くことに。
献血ルームまでは、駅に着いてからは外に出ることなく到着。
おお、写真通りきれいなところ。それと、思ったより人が多い。
人が多いのは予想外だった。みんな社会貢献に来てる仲間たちだ。意識が高い人たちの中に私たちも紛れているのか。
少し気後れしながらも、受付に向かう。
そこで初めて知ったが、予約ということができるらしい。
予約をして時間を決めておけば待つことなくスムーズに献血ができるとのこと。
なるほど。ちゃんと献血にこの日に行くぞ!と決めて来ている人が多いということか。
予約なしで来た私たちは、2~3時間ほどかかってしまうかもしれない、と伝えられた。
今の私たちには特にこれからの予定はなかったので、これを了承。
その後は、献血の流れについて説明を受ける。
夫は全くの初めてなので、丁寧に一から説明を受けていた。
その横で私は献血カードを提出し、400mlは初めてなことを伝えるが、基本的には200mlの時と同じ流れだった。
血圧と心拍を測る
最初に血圧と心拍を測る。銭湯に置いてあるようなセルフで計測するタイプのやつで、結果がレシートのように印刷されて出てくる。
普段は高くも低くもない血圧と心拍。
ところがなぜかこの日の私の心拍は異常に高かった。
100を超えると献血ができないと言われているのに、なんと109という数字を出してしまった。
夏場で暑いのと、マスクをしていたせいかもしれない。
これではダメだ!早く心拍を下げなきゃ!!
そう焦れば焦るほど心拍というものは、言うことを聞いてくれない。
次に測ると今度は110!!
次だ次!!
102!!惜しいもう少し!!
107!!なんで上がった!!
97!!!よっしゃ!!100切った!!
測るたびに次々と出てくる結果の紙をポケットに押し込み、ようやく使えそうなデータが印刷された紙を、さも1回目の結果かのように提出しに行く。
問診までの待ち時間
人が多かったこともあり、血圧と心拍を測定した後はしばらく待合で待たされた。
献血ルームはそういった暇な時間をつぶせるように、色々と漫画が置いてあり、どれを読んでみるか物色してみる。
やっぱりあった、はたらく細胞。
こんなにもはたらく細胞にふさわしい置き場所なんて、そうそうないだろう。
アマプラでアニメを観たことはあったけど、漫画は見たことなかったなと思い、まずは1巻を手に取りページをパラパラめくってみる。
おぉ、漫画の方がグロい…。
アニメでも白血球たちが血まみれになりながら細菌たちを抹殺していっている描写があるが、漫画の方がより血まみれな感じがリアル。
おびえながらも健気に酸素を運ぶ赤血球、傷の修復に向かう血小板ちゃん。
そんな仲間たちを私の体から抜いて、誰かの体に入り込むことで、その体でも活躍してくれるだろう。
想像を膨らませながら漫画を読むこと30分程で、呼び出しの機械が鳴る。問診に呼ばれた。
問診
個室に案内され入ってみると、さながらイスに座って話せる景品交換場所のように、机とアクリル板で区切られた先に先生が待っていた。
ちゃんと書類を渡せるようにアクリル板にすき間がある。もう景品交換所だ。
景品交換所で先生から問診を受け、特に引っかかることもなかったようで、問診はこれで終了。
景品(書類)を受取口から手渡され、景品交換所を後にする。
検査用採血
私にとって一番懸念していたのが、この採血だった。
なぜなら私の血管は、細いうえにどこにあるかわからないのだ。
しかし私には一か所だけ確実に採血できる場所が右腕にある。
だから健康診断ではその場所を教えることで、一発で採ってもらうようにしている。
ところが献血では、検査用採血と献血用と2回針を刺されることになる。一度刺した場所は再度刺すことができないらしいく、反対側の腕の血管を使うらしい。
つまりもう一か所はどうにかして、私の普段刺し慣れていない左腕から探し出してもらわないといけないことになる。
まずは看護師さんに両腕を見せる。
どうやら献血用の血管は、いつも刺している右腕の場所にするようだ。
献血用の針は、採血用の針よりも太いとのこと。だから確実に採血ができる血管は献血用に残しておきたいらしい。
ではもう一か所の左腕はどこに刺すのか。
それはもう大変だった。
看護師さん2人がかりで血管を探すことになったのだ。
さらには手をグーパーしたり、腕をだらんと下げたり、カイロで腕を温めたり、温かい飲み物を飲んだり。
血管のために尽くしに尽くした。
そしてようやく看護師さんが狙いを定める。
「刺しますね〜‥‥
ごめんなさい、一度抜きますね。」
あ〜、ダメだったか‥‥。ほんと私の血管のせいですみませんすみませんすみません。
口でも謝ってはいるが、その何倍も心の中ですみませんを復唱しまくる。ほんとにすみません。
もう一度、手をグーパーしたり、腕をだらんと下げたり、カイロで腕を温めたり、温かい飲み物を飲んだり。
もう一度、血管のために尽くしに尽くした。
そしてもう一度看護師さんが狙いを定める。
「刺しますね〜‥‥
はい!採れました!ありがとうございます!こんなに時間かけてしまってすみませんでした!!」
いえいえいえ!!こちらこそありがとうございます!!そしてすみませんでした!
お互い謝り倒して、ようやく献血となった。
献血
歯医者さんの治療室にあるような椅子に案内される。
この椅子がすごくフカフカして気持ちが良くて、寝れそうなぐらいにホッとする。
また献血中の時間は備え付けのiPadで暇を潰せるようになっている。至れり尽くせり。
しかも窓側に向いていて、景色も楽しめるしでもう最高か。(写真は撮れなかった)
さぁ、ここまで来るのに時間を取らせてしまった。ようやく献血ができる。
看護師さんから、献血中体調が悪くなったらすぐ言うこと、献血が終わった後は、ゆっくりと椅子から立ち上がることなど、説明を受ける。
説明を受け、いざ右腕を差し出す。
「なかなか血管出てくれませんねぇ。すみません、血管浮き上がらせたいので、温めていきますね。」
そう言われ、右腕を2個の湯たんぽで挟まれ、さらにはタオルでぐるぐる巻きにされる。
やっぱりすんなり献血ができない‥‥。私の血管どんだけ引っ込み思案なの。
しばらくするとなんとか針がさせるぐらいに血管が出てきたよう。
「刺しますね〜‥‥
はい!採れました!うまく血が抜けてるので、このまま続けますね。」
1発で採ってくれました!ほんと看護師さんすごい。
心の中で尊敬し尽くし、ぼーっと抜かれた血液が通っていくチューブを眺める。
チューブって結構太いなとか、自然と血が抜けていくんじゃなくて、機械が血を抜いていくんだなとか、色々と観察できた。
途中で意外と刺されている針が太いことを知り、つい少し目を背けてしまう。
それからは、看護師さんが献血が終わる目安として置いていってくれた砂時計を眺めたり、備え付けのiPadで青空文庫で「こころ」を読んだりして時間を潰す。
時間を潰している間も、どんどん血は抜かれている。どうやら刺されている針が太いせいか、なんとなくずっと痛いような感じがある。
砂時計の砂が落ち切り、機械のアラームが鳴ったところで、看護師さんがやってくる。
正直、青空文庫なんて読んでいる暇なかった。それぐらいあっという間に時間が過ぎていた。
手早く針を抜いてもらい、処置をしてもらう。その間、間を持たせるために話すという意味もあるだろうが、献血に来てくれたことを感謝してくれた。
あれ、私ってこんなに感謝されることをしたんだ。
と、なぜかこの時に実感した。自分では大したことないことでも、世の中には必要としている人がいるってことを改めて感じた。
社会貢献できたことの余韻に浸りながら、看護師さんに言われた通り、ゆっくりと椅子から立ち上がり待合室に向かう。
献血直後
献血が終わったら、飲み物を飲むように言われていた。
単純に体から400mlの水分がなくなっていることになるから、体が水分を欲している状態になっているらしい。
言われた通り、飲み物を提供してくれるカウンターに向かい暖かいお茶とお菓子を受け取る。もちろんタダ。
先に終わっていた夫のいる席に向かう。
その時に私はあることに気づく。
あれ?めっちゃぼーっとするし、息切れする。
立派な貧血の症状だった。
もう席にたどり着くと30分は動けなかった。すぐ動いてしまうと、息切れしてしまうし、立てなくなりそうだったからだ。
これはもうお出かけどころじゃないぞ。少し元気になったらすぐ家に帰ろう。
休憩している間に、席までスタッフさんが私と夫の献血カードを返しに来てくれた。
おぉ、ちゃんと400mlの記載がされている。本当に私の体から血が400ml抜かれたのか。
献血カードの内容を確認した私たちは、献血ルームを後にし、すぐ帰宅することになった。
献血翌日の体調
幸いにも翌日は日曜日で、特に予定も入れていなかった。
まず普段と違ったのは、朝起きられないこと。
泥のようにいつまででもベッドで眠り続けられるぐらい、体が睡眠を欲していた。
どうにか午前中にベッドから起き出したのはいいものの、結局ソファで横になっていることが多かった。
あとは、すぐに息切れをしてしまうこと。
料理をしたり掃除をすると、すぐ息切れしてしまい疲れてしまった。
本当に身を削っていると言う実感がある。でもそれ以上に大変な状態の人たちに、私の血が役立つのであれば、これぐらいなんてことはない。
また献血に行って貢献しよう!もちろん、お出かけの予定は入れないし、翌日はお休みの日に行こう!
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