前回の記事では、一つ目の苗字についての思い出を書いてきた。
二つ目の苗字は、中学生(正確には小学4年生)から結婚をする前まで使用していた苗字。
今のところ私の人生で一番長く苦楽を共にした苗字でもある。今でも愛着があり、今でも嫌いであり、そして私のアイデンティティを形成した重要な苗字と言っても過言ではない。
この記事では、一つ目の苗字から二つ目の苗字へと変わるときの話になる。
二つ目の苗字になるきっかけ
小学4年生頃にある出来事があった。父が日本国籍を取得し帰化したのだ。
帰化したことによって、父と母は国際結婚ではなく、日本人同士の婚姻関係と同じ扱いになることから、両親の苗字は統一しなければならなくなった。
母は父の苗字になる。つまり私の苗字も父の苗字に変わったのだ。
これが二つ目の苗字の理由。
苗字変更に伴う手続きの大変さと、世間の配慮
母と私に関する公式な書類関係は、全て苗字変更を余儀なくされた。母からしたら遅れてやってきた、結婚に伴う苗字変更の手続きだっただろう。
しかも自分だけでなく、子供の私の分まで手続きをしなくてはならない。小学生だった私が一人で、こんな手続きができるわけがないからだ。母は大変だっただろうな、と今の私なら労ることができる。
私がぼんやりと覚えているのは、本人が署名しなくてはならない箇所である、住所・一つ目の苗字・二つ目の苗字を、これでもかというぐらいに書きまくったことだ。特に二つ目の苗字は、小学生からしたら見慣れない漢字だったこともあり、母に苗字のお手本を書いてもらい、それを絵を描くように写していた。
そして学校側の配慮もあり、小学生の間は一つ目の苗字で卒業するまで過ごすことができた。
これは本当に今でも感謝している。
いきなり違う苗字で呼ばれても、当時の私は臨機応変に対応できなかっただろうし、持ち物も全て名前を変えなくてはならない。
さらには友達から呼ばれるあだ名も変わってしまう。変わった苗字だったこともあり、下手したらいじめの対象になっていたかもしれない。小学生であれば、友達から呼ばれているこの慣れ親しんだあだ名が、どれだけ大事な意味を持っているだろうか。
そこでふと思い出したのが、前回の記事でも書いた、同級生の苗字が変わったときの出来事だった。
その同級生はどれだけ名前が変わることに対して不安に思ったのだろうか。ましてや私の場合と違って、家庭環境が大きく変化するという出来事もあったのに。
私は苗字が変わることに対して、あまり触れてほしくなかった。何故だかわからないが、多分説明をするのがややこしいし、めんどくさかったからだと思う。小学生で苗字が変わった経緯なんて、説明できるはずもない。
改めて、同級生に対する対応は間違ってはいなかったんだなと、身をもって実感した。
卒業証書に記載する苗字はどっち?
私が苗字の変更に関してはっきりと覚えていることは、小学6年生の卒業間近という時期に、卒業証書の名前をどちらの表記にするかということで、担任の先生と母と私の3人で話し合ったことだ。
一つ目の苗字にするか、二つ目の苗字にするか、卒業証書を2枚もらってそれぞれの苗字を記載するか。これらの3つの中から選べたのだ。
卒業証書でこんなにパターンを選べるのか、と当時は冷静に感じていた。まだ使ったこともない苗字に対して、愛着もないし実感を持っていなかったからだろう。
私としては、せっかくだからそれぞれの苗字が書かれた2枚の卒業証書が欲しかった。卒業証書を2枚も貰えるなんて、こんな貴重な機会が滅多にないことだし「じゃ〜ん!卒業証書2枚持ってるんだ〜!珍しいでしょ?」と自慢したかったからだ。
しかし私の意見は聞き流され、結局一つ目の苗字で卒業証書は1枚のみとなった。子供だからといって舐められたものだ。今でも2枚欲しかったと思っている。もし自分に子供ができたら、子供の気持ちはある程度尊重しよう、と子供ながらに心に決めた出来事だった。
こうして無事小学校を卒業することになった。
一つ目の苗字から二つ目の苗字へと、グラデーションのように変わってきた頃が終わり、ついに二つ目の苗字を本格的に名乗っていく時代が始まった。
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