

紹介状を書いてもらってから約1ヶ月が経ち、ようやく大学病院の診察予約日になった。
やっとという気持ちと、大学病院怖いという気持ちが合わさって、なんとも複雑な心境だ。
ただしこりのはっきりした診断をつけてもらわないと、もしかしたら大きな病気なのかもしれない。むしろ早めに来てよかったと思えばいい。
嫌なことはさっさと済ませてしまおうと意気込みで、朝早くから大学病院へと向かった。
予約時間は守ったはずなのに
私が書いてもらった紹介状は耳鼻咽喉科宛のものだった。紹介状と一緒に、予約日時や持ち物の詳細が書かれた紙ももらっていた。
大学病院というところに行くのは初めてのことで緊張していたこともあり、予約日前日には念入りに読み込んでいた。
8時45分までに初診窓口で受付をするようにと書かれてあった。
到着時間は8時半を目標とし、久しぶりに朝の通勤ラッシュに揉まれながら電車に揺られ、8時35分ごろに大学病院へと到着。
病院内では初診と再診では受付の流れが違うようで、初診の場合はまず整理番号を発券し、番号が呼ばれるまでに住所や連絡先や紹介状の有無といったことを書いておく流れだった。
すでに待合のイスにはたくさんの人が座っており、これは書類を書いたところですぐに呼ばれることはないことを察する。
結局私が呼ばれたのは9時10分ごろだった。耳鼻咽喉科の予約時間内ではあるがギリギリだ。
大学病院って本当に待たされるものだと洗礼を受けた気分だ。
簡単な問診から
初診窓口で紹介状など諸々必要書類を提出し、代わりに何かしらの必要書類と病院のマップと診察券をもらう。まずは耳鼻咽喉科のある2階に向かい、そこの窓口で必要書類を渡すようにとのことだった。
耳鼻咽喉科の窓口まで行き、言われた通り必要書類を提出し、今度は問診票と受診番号を手渡される。
コロナの症状がないかを詳細にチェックする問診票が1枚。普段の病院よりももっと詳細な内容を書く問診票が1枚。あとは大学病院ということもあり学生や研修医が立ち会うことの同意書や論文に掲載する資料にするかもしれないことの同意書なども書く。
これらの問診票がなかなかボリューミーで書くのに手間取っていると、意外と早くに私の名前が呼び出された。おそらく予約していたからだろう。
呼び出された部屋は診察室で、若い男性医師が対応してくれた。
問診票を書き終わる前に診察室に呼び出されたので、問診票が書けていないことを申告すると、ここではコロナの問診票だけで大丈夫とのことだった。
そして診察へと移る。私の両耳下を触り、しこりの大きさや左耳下にしかないかを確認する。
ただ、すでに紹介状である程度の症状が書かれていたのだろう。すぐにこの男性医師がこう言った。
「一般的な診断をするならこれは耳下腺腫瘍だと思います。耳下腺腫瘍というのは、まず良性と悪性に分けられますが、1年ほど前からしこりの大きさがあまり変わっていないということなので悪性の可能性は低いです。そして良性の場合はワルチン腫瘍と多形腺腫の二つです。多形腺腫の場合は数十年後に数%の確率で癌になります。どちらにせよ手術した方がいいですね。」
おおおお、何やら初めて聞く言葉が多いこと。多形腺腫なんて音だけ聞くと竹井選手と聞こえてしまって、意味がわからなくて全く話が入ってこない。
調べてみると耳下腺腫瘍の発生頻度は10万人に1〜3人とのこと。
医師が続けて、
「耳下腺腫瘍のうちの良性か悪性かは、これからエコー検査やMRIやCTといった画像検査をすることでより腫瘍の詳細がわかってきますが、それでも100%の判断はできないです。それもあって手術で取り除いた方がいいです。ただここは大学病院なので検査の予約がなかなか取れないので、全て終わるのに1ヶ月はかかっちゃうんですよね。まず今日はエコーを撮って、できたら針を刺してしこりの中を少し取ってみましょう。」
一気にいろんな検査をすることが決まり、今日も何かしらの検査をすることが確定した。もう流されるがままだ。
ただ私は病院を信じているので、最良だと提案されるものは全てやっていきたい。
ということで早速この日は、エコー検査・穿刺吸引細胞診・採血を行うことが決まった。
エコー検査と穿刺吸引細胞診
診察室を出て待合のイスに座り、残りの問診票を埋めていく。
その間も患者がどんどんと呼ばれていろんな部屋を出入りしていく。救急隊員にストレッチャーで運ばれてきた患者までいたので、改めてここは大学病院であることを認識させられる。
問診票を書き終わり窓口で提出して、エコー検査と穿刺吸引細胞診のためにまた別の部屋から呼ばれるとのことでまた待ち時間ができてしまった。先ほどの医師が言うには40分は呼ばれないだろうとのこと。
待っている間にやっぱり気になるのは穿刺吸引細胞診という検査だ。問診で対応してくれた医師が言うには、
「しこり部分に針を刺して中身を少し吸引して検査に回します。やはり針なので痛いのは痛いですがトラウマになるほどではないので大丈夫ですよ。」
なんかここまで針の痛さに言及されると、余計に恐怖心が増してくる。
どうしても気になり、スマホで穿刺吸引細胞診について調べてみると、どうやら使う針は採血の時と同じ太さらしい。ということは痛さは採血ぐらいだろう。であれば問題なさそうだ。気にしない気にしない。強いていうなら針を刺しているところが目視できないぐらいだ。
本当に40分以上待たされてようやく私の名前が呼ばれる。
さっきとは違う診察室で、耳鼻科にあるようなしっかりとしたイスがあり、男性と女性の2人の医師が対応してくれた。
男性医師がまた私に色々と問診をしてしこりを触ってみる。そして私に頭だけ右を向くように指示し、しこりのあたりにエコーのためのジェルを塗り、エコーによってしこりの正確な大きさを計測する。
ちょうど私が向いていた側にエコーで映し出される画面があったので、私もしこりを見ることができた。乳がん検診で見るエコー画像なんて一体何が写っているのかわからないものばかりだったが、今回のエコーは画面いっぱいにしこりが映し出されているのが私でもわかるものだった。マウスを使って大きさを測っていくのも見ることができ、大体横幅も縦幅も3cmないぐらいだった。
そしてエコーで映したまま、しこりに針をさすことになった。刺した瞬間はまさに採血のあの痛さだ。なんてことはない痛さで、すぐに針を抜かれて女性医師に絆創膏を貼ってもらい、ジェルも拭き取ってもらう。一瞬で終わることができた。
このあとは、MRIやCTといった画像検査の予約を取る作業に移る。女性医師がパソコンを前にして空いている日時を確認してくれて、無事に予約は完了。検査結果を受けて今後の治療方針を立てる日まで決めたが、しっかりと1ヶ月はかかることになった。
ちなみに予約を取る時に、女性医師が私のそばまで歩いてきて小さな声でコソッと
「大体でいいので、身長と体重も教えてもらえますか?」
と聞いてきた。なんてきめ細かな配慮なんだ。私はレディーの扱いを受けたことに感激してしまった。
採血
採血を済ませれば、この日の予定は終わりだった。
画像診断では造影剤を使うものがあるので、アレルギーがないかを調べるための採血とのこと。
採血をする部屋というのがあるらしく、今度は3階へと移動する。
採血部屋の前まで行くと、どうみても30人以上の人がイスに座って採血待ちをしている。おそらく全ての診療科の採血をここで担っているんだろう。
窓口ですら5人以上は常に並んでいる。
私もその列に並び、耳鼻咽喉科から回されてきたことを確認され、自分の受診番号が部屋の入り口上にある画面に映し出されたら入室するようにとのことだった。
その画面を見上げてみると【待ち時間約21分】と書かれている。採血はそこまで時間が掛からなさそうだった。
大人しく部屋の前のイスに座り、本を広げて時間を潰す。
本を読んでいると時間が経つのはあっという間で、すぐに私の受診番号が表示された。
部屋の中に入ると、数人が採血待ちをしているがすぐに採血に進んでいるようだった。予想通り私の名前もすぐに呼ばれ、採血のイスに座る。
献血を何度かしているので、採血の流れはよくわかっている。経験上、私の場合は右腕の方が刺しやすいようなので、すぐに右腕を差し出す。
テキパキと看護師さんが針を準備し腕に刺していく。一発で血が取れた。
針を抜き絆創膏を貼り、これでようやく今日の検査は全て終了となった。
すでに12時を回っていた。どうりでお腹が空いているわけだ。
1階でお会計を済ませて、久しぶりにいきなりステーキで自分へのご褒美を満喫。
これから画像診断のために、また大学病院へと訪れることになった。

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