1年半以上、外に出る時はマスクをつけている。
マスク越しでも美味しそうな匂いとか、ゴミの臭いは感じ取ることができる。
なんだ、意外とマスクしてても匂いって感じ取れるもんなんだ、と思っていた。
家でマスクを外すと
家の中に入ったら、靴を脱ぐよりも先にマスクを外す。
体で一番縛られていてすぐに外せるのがマスクだから。
そして部屋の中に入ると、窓を閉めているせいか少しムシっとして暑い。
換気のために窓を全開にする。
するとなんだか匂いが感じられる。
ご飯の匂いでも、ゴミの臭いでもない。
町の匂いとでもいうのだろうけど、別に懐かしくも何ともないし、表現の出来ない匂い。
さっき外にいるときはこんな匂いはなかったのに、部屋から外の匂いを嗅ぐと何か匂いを感じることができる。
これはあれだ。マスク越しでは感じることのできない繊細な匂いなんだろう。
陽が傾いてきて仄暗くなった中で感じた匂いがなんだかノスタルジックな感じで、この匂いを覚えこませようと、たくさん深呼吸をしてみた。
外でマスクを外すと
ある日の深夜。
図書館の本の返却期限が当日だったことを思い出し、慌てて返却ボックスに返しに行った。
しかしあまりにも慌てていたので、マスクをつけるのをすっかり忘れていた。
気づいた時には、すでに図書館の前。ありゃ、手遅れだわ。
幸いにも誰かとすれ違ったり話すといったことはなかったのでよかったが、もし昼間だったら白い目で見られていたかもしれない。
そんなことを想像しながらほっとしていると、ふと匂いがした。
表現の出来ない匂い。でも部屋から外の匂いを嗅いだ時とまた違った匂い。
この町の夜の匂いなのかな?
家の匂い
本を返し、誰かとすれ違わないことを祈りつつ家に帰ることに。
家のドアを開けて中に入ってすぐに、また匂いがあった。
これはあれだ。晩ご飯の煮物の匂いだ。
家のなかにいるときは気づかなかったが、外から帰ってくるとしっかりと煮物の匂いが残っていた。
うわぁ、こんな煮物の匂いまみれの部屋にいたのに全然気づかなかったなぁ。
これはずっと同じ匂いの中にいると、その匂いに慣れてくる順応ってやつだと思う。
いつになるかな
マスク越しで感じる匂いは、ご飯だったりゴミだったり、はっきりとどんな匂いなのかがわかる。
しかし町の匂いとか季節の匂いといった、はっきりとどんな匂いと表現ができないあいまいなものは、マスク越しでは感じ取ることが少なくなった。
別にこのあいまいな匂いは感じなくても生きてはいける。
でも景色と匂いがリンクすることで、思い出になることもある。つまり思い出のきっかけが減ったのではないか。
あらためてよく思い出してみる。
去年は特に外出の機会が減ったせいもあるが、匂いを感じた記憶があまりない。
早く景色と匂いを連動させて、懐かしくなるあの繊細な感覚を味わいたい。
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